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見えてきたこと

~世界の子ども研究~ 今を知る
「~世界の子ども研究~ 今を知る」では、世界中で行われている
子ども研究の最新情報をわかりやすく解説していきます。

幸せって伝染するの?

Fowler & Christakis 2008 BMJ Dynamic spread of happiness in a large social network: longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study

喜んでいる人を見るとなぜか自分も嬉しくなる、というように感情が伝染することは科学的にも証明されてきています。「幸せ」そのものが伝染する、といったことはあるのでしょうか?これを調べるため、米ハーバード大の研究チームは、約5000人を対象とした20年に渡る追跡調査を行いました。

その結果、幸せは伝染することが示されました。この効果は一時的なものだけでなく、周りの人、例えば家族や友達に幸せな人が多いと、将来幸せになる可能性が高い、ということがわかりました。興味深いことに、この「伝染」には物理的な距離の近さが重要なようで、遠く離れた友達よりもすぐ近くに住む友達、ご近所の人の中でも特にお隣さん、で伝染の効果は強くみられました。

なぜ幸せが伝染するのかのメカニズムはまだはっきりとは解明されていません。幸せになるには?というのはとても重要なテーマで、これまでにたくさんの研究が行われてきていますが、同時にまだまだわかっていないことも多いです。私達もこのコホートプロジェクトを通じて、これから思春期を迎え大人になっていくお子さん達や、彼らを支える家族の人たちがどうすれば毎日を幸せに暮らせるのか、少しでも明らかにしていけたらと思います。

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食事のとき楽しく会話していますか?

家族で囲む食卓の重要性は、既に学術的な論文や雑誌などでたくさん報告されています。心身の健康が保たれること、喫煙、飲酒や薬物の使用などに手を出す可能性が低くなること、学業や社会適応への良い影響があること、などが知られています。

今回のニュースレターでは、家族で食卓を囲むことの何がお子さまに良い影響を与えるのかについての報告をご紹介します。イスラエルで15歳前後のティーンエイジャー237名を対象に行われた研究調査では、家族で食卓を囲むかどうかだけでなく、食事の時に親子で会話をすることがお子さまたちの精神面にどのように影響をあたえているかを調べました。その結果、単に家族が集ってご飯を食べているだけの時よりも、食事中に会話もしている方が、お子さまたちは普段から明るく快活な気分になることがわかりました。また、やる気や好奇心が強まり、ストレスも少ないことも明らかになっています。つまり、家族が食卓を囲む時に会話をすることが、よりお子さまたちに幸福な気持ちを生むようです。親御さんだけでなく、お子さまたちにとっても、家族での食事時の会話は楽しいもので、心もお腹も満たされるひとときなのですね。

しかし、お子さまたちも成長し、思春期を迎えるにつれ、部活や勉強が忙しくなって同席できないことが多くなったり、なんとなく親御さんとの真剣な会話が気恥ずかしくなって黙りがちになったりしてしまうかもしれません。また、お仕事などがお忙しい親御さんも多く、家族が一緒に食卓を囲む時間を必ずしも十分にとれるわけではないと思います。だからこそ、その少ない機会をぜひ活かしていければいいですね。何気ない家族の団らんが、お子さまたちの幸せな成長につながる要因の一つなのかもしれません。具体的にどのような会話や食事時の雰囲気がより良い影響を与えるのか、両親以外の家族との食事はどうなのか、などに関してはまだはっきりとわかっていないことも多く、今後の研究成果が待たれます。

日常生活の一コマ、人生のワンシーンがたくさん繋がって人間同士の絆が生まれ、それが子どもたちにどのような未来をもたらすのか。そのようなことを調べることができるのも、社会をベースにした研究調査の魅力です。私達の研究調査からも新たな絆と未来の繋がりを発見できるよう、これからも尽力したいと思います。

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思春期にIQが変化するって本当ですか?

Ramsden et al. 2011 Nature Verbal and nonverbal intelligence changes in the teenage brain

知能指数(IQ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。IQは、知的な能力を計るために最もよく使われる指標です。IQは、もともと、小学校入学前にテストを実施し、学校についていけない可能性の高い子を見つけ出して、その子たちに合った教育を与えるという目的で開発されました。この目的からもわかるように、IQは生まれつきで一生変化しない、というのがこれまでの科学の世界における「常識」でした。ですから、たとえば子どもの頃にIQを調べれば、今後の成績や就労状況が予測できると言われていました。 IQの検査結果が、子どもたちの将来を左右することすらあったのです。

しかし、これをくつがえす事実をロンドン大学のプライス教授の研究チームが発見し、2011年に、権威あるイギリスの科学誌ネイチャーに報告しました。研究チームは10代の男女を集め、およそ4年の間隔をあけてIQテストを2度行い、その間に思春期の青年たちのIQが大きく変化することを突き止めたのです。言い換えれば、IQは生涯変わらないわけではなく、成長に伴って変化しうるのですね。彼らの研究に参加した子どもたちの中には、4年間でIQが20上昇した人もいました。これは、クラス平均よりも勉強の 出来なかった子が学年一の秀才になるくらいの、びっくりするような変化です。

このような結果を見ると、私たち研究者は「IQが変化するのはなぜなのか」を知りたくなるのですが、残念ながらまだはっきりとした原因は分かっていません。ヒトの脳の発達には早熟・遅咲きといった個人差があるために、1回のテストで単純には比べられないのかもしれません。適切な教育によって、ヒトの知的能力が大幅に伸ばせるのかもしれません。思春期になってますます複雑になる友だち付き合いが影響するという可能性も考えられます。たくさんの仮説が存在し、議論は尽きないところですが、いずれにしろ大切なのは、「子どもの能力をあまりに早いうちから決めつけると、未来の可能性が失われかねない」ということではないでしょうか。

思春期は多くの面で様々な変化が急激に生じる時期です。第二次性徴を迎えた身体は大きく様変わりし、自分とは何なのか思い悩む心が生まれ、少しずつ社会性を身に付けていきます。今回紹介したIQの上昇はほんの一例で、この時期は本当に「まだまだ分からないことだらけ」なのです。私たちのコホート調査は、思春期に注目することで、お子さんのよりよい成長を応援していきたいと考えています。

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子どもの思いやりはいつどのように芽生えるのか

Hamann 2011 Nature Collaboration encourages equal sharing in children but not in chimpanzees

「社会性」は、いろいろな能力の集まりで成り立っています。他人の気持ちを正しく推測したり、他人のために我慢をしたりしながらうまく生活を送っていくことで、人は社会の中を生き抜いていきます。こうした能力の一つに、「思いやり」という能力があります。思いやりとは、他人の身の上や心情に心を配ることであり、社会生活をおくる人間にとって、大切で欠かせないものです。

では思いやりは何歳くらいからどのように芽生えるのでしょうか?誰でも、赤ちゃんの頃から、他人を思いやることができるのでしょうか?それとも、幼稚園や小学校で、大人や、他の子どもたちの言葉や行動を参考に、見よう見まねで身につけるものなのでしょうか?

世界で有数の総合科学誌『ネイチャー』に、ドイツのトマセロ博士の研究グループが、幼児の「思いやり」行動を題材とした興味深い研究結果を報告しています。今回は、その研究について紹介します。以前から、人間の子どもでは、5~7歳で他人に物を平等に分け与える傾向がみられるようになるということが報告されていました。小学校に入るか入らないかくらいの頃ですね。トマセロ博士は、年長の子どもや大人ほど多くはないものの、たった2~3歳の子どもでも、他の子どもに物を平等に分け与える行動がみられることを、実験で示しました。さらに、この分け与える行動が、他の子どもと協力する経験を通じて促されることも発見したのです。他の子どもと遊んだり、協力したりすることが「思いやり」という大切な気持ちを養っているのだと言えるかもしれません。普段の何気ない生活が、大切な気持ちを育んでいるなんて、本当に素晴らしいですね。

思春期の成長につながる子ども時代には、まだまだ知られていないことが多く、たくさんの可能性が秘められていると言えるでしょう。

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